トップページ > 会社概要 > アグロフォレストリー > 「トメアス式アグロフォレストリー」について
トメアスはブラジルのアマゾンにある日本人移住地であり、町の歴史とともにアグロフォレストリーが発展してきました。トメアスのアグロフォレストリーは、持続的な農業をしながら荒廃地を再生できることから、高いCO2吸収力や生物多様性の回復のみならず、沙漠化や食糧危機、農村地域の開発や貧困問題といった地球規模の課題への対策としても、国際的に大きな注目を集めています。
トメアスのアグロフォレストリーは、畑の立地や環境条件、収益のタイミング、植物同士の日照・水分・養分の競合、作業性の効率(収穫時期、栽培管理)などを考えて作物が選定され、実にさまざまな組合せで構成されています。
トメアスの周辺には開発されて荒廃地化した土地が沢山あります。アマゾンの土壌は薄く、裸にしてしまうと栄養素が流れて植物が育ちにくくなります。
トメアスのアグロフォレストリーはコショウの栽培からはじまります。最も作物の種類が多い時であり、コショウが10年以内に枯れることを見越して間に果樹や樹木の苗を植え、また空いた列間を有効利用し一年生の野菜やコメなどの作物を植えます。
コショウが枯れ、果樹が実をつけます。最も生産量が多くなる時期で、また最も二酸化炭素の吸収量が多い時期とされています。
高木は葉を生い茂らせ、低木は高木の下で育ち、様々な高さの木々が共存する自然の森のような生態系が完成します。『森』が出来上がると果樹の生産量は落ち、後は材木として価値を得るまで育てられます。
トメアスには1929年より日本人移民が入植し、入植当初は生活苦や過酷な労働、厳しい環境と恐ろしい風土病に苦しめられました。
そんな中、1933年にシンガポールよりコショウの苗が持ち込まれ、「黒いダイヤ」とも呼ばれたコショウはトメアスに莫大な富をもたらします。
しかし1960年頃よりフザリウム菌による根腐病が入り始め、コショウは次々に枯れ、生産量は激減します。
深刻な病害と市場価格の変動のリスクを避けるために、CAMTA(トメアス総合農業協同組合)により取扱い作物の多角化としてコショウの代替作物にカカオが提案されました。カカオは40%の光があれば栽培できる日陰を好む作物です。そこで様々な樹木を混植する先住民の方法に倣い、コショウの陰で育つように間にカカオを植えはじめます。
そして1975年にカカオの価格が高騰したのを機にトメアスに再び光が訪れました。
その後CAMTAは更なる多角化を図り、コショウを主幹作物にカカオ、アブラヤシ、ゴム、パッションフルーツの栽培を奨め、トメアスの畑には次第に作物の種類が増え、畑から樹木も果樹も、野菜も採れるようになりました。また新しく森林を切り開き畑をつくる必要がなくなり、同じ畑で長期的に収益を得られるようになりました。
こうしてトメアスの発展に欠かせない要素としてアグロフォレストリーは確立されたのです。
畑に樹木を植えることは戦後ごろから奨励されてきましたが、はじめて『システム』として混植を推奨したのは故坂口陞(のぼる)さんでした。
坂口さんがCAMTAの農業技術普及担当の理事になった時、コショウの病害の大打撃によりコショウに替わる作物はないかと探していたところ、アマゾンの先住民が様々な種類の作物を混植し、飢えもなく暮らしている様子を目にしたのがヒントとなりました。
それを参考に被陰樹を必要とするカカオとコショウの混植がはじまったのです。