【対談】Z世代とアラカンアサイーおじさんが語るアグロフォレストリーのミライ

By frutafruta, 2023-04-26

 一年ほど前の早春に、メールで「入試の準備でアグロフォレストリーを研究テーマにしたのでインタビューをしたい」とのご依頼をいただき、当時高校二年生の福田隆之介さんが来社されました。

これまで研究室や大学の授業で・・・と複数の学生さんに対してレクチャーをする機会はありましたが、高校生が入試目的で来られたのもこれが初めて。時代の風を感じさせられた出来事でもありました。

 そして見事志望校に合格されたことを機に、ご本人へのインタビューを兼ねて代表の長澤との対談の場を設けました。

 この春から大学生の若者と、アラカンで一企業の代表者という世代も立場も全く異なる二人。唯一の共通点は「アグロフォレストリーが大好き」であること。それぞれ独自の視点からアグロフォレストリーの未来を語り合います。

(対談は2023年3月中旬に行いました。)

 

福田さんから簡単に自己紹介をお願いします

福田:小学生の頃より農業に関心があり、農家になることが夢です。大学入試をきっかけに元々好きだったアサイーについて調べてみようと思い、その栽培方法のひとつであるアグロフォレストリーを掘り下げてみたいと思いました。

 またその傍ら、全国の高校生を対象としたプレゼンコンテスト「CHANGE MAKER U-18 未来を変える高校生 日本一決定戦」に参加し、決勝まで勝ち進んだ模様がテレビ東京の特別番組で放送されました。私は「東京の森林で農業」をテーマに、衰退する日本の農業をアグロフォレストリーと里山で活性化するアイディアを発表しました。

(番組ページ:https://www.tv-tokyo.co.jp/information/202212/3778.html)

 この春からは大学で総合政策学を学ぶ予定です。

 

長澤:テレビの放送を観てお会いしたいと思ってたんですよ。この度は大学合格おめでとうございます!世代も活動環境も違う福田さんに色々教えてもらいたいと思っています。今日は宜しくお願いします。

 

福田:ありがとうございます。家族皆でアサイーが好きで、コロナ前に家族でハワイに旅行に行った時は10杯以上食べたぐらいアサイーが大好きです。今日はお目にかかれて嬉しいです!

 

アグロフォレストリーを研究テーマにした背景を教えてください

福田:テーマを決めるにあたって、まず自分の好きな食べ物から検討してみようと思い立ち早速対象となったのがアサイーでした。それまでアサイーについてあまり知らなかったので、アグロフォレストリーのこともそうですが、ブラジルのフルーツだとか、健康に良いなど初めて知ることばかりで驚きが沢山ありました。

 

長澤:我々の狙いに見事にハマってくれましたね(笑)

近年はSDGsの盛り上がりからアグロフォレストリーへの関心も高まっていますが、今のような環境になるまでは、まずアサイーの存在と消費者にとってのメリットを知ってもらうことが第一でした。フルッタフルッタはアグロフォレストリーを応援するために創った会社ですが、アサイーやアマゾンフルーツを好きになってもらった後にその背景にあるストーリーを知ってもらうのがこれまでの伝え方でした。

福田さんは、アグロフォレストリーのどの様なところに魅力を感じたのでしょうか?

 

福田:小さい頃から農業に興味があったこともあり、「大好きなアサイーの栽培方法」であることにまず興味を持ちました。そしてアグロフォレストリーの動画を観た時に、他の農業と全く異なる点に魅力を感じ、率直に「面白い!」と思いました。

具体的に魅力を感じるポイントを絞れているわけではないのですが、即座に家族にも動画を見せて盛り上がったことがアグロフォレストリーと出会った時の思い出です。

 

長澤:アグロフォレストリーに目覚めた瞬間だったんですね(笑)

 

1年間のアグロフォレストリー研究を経て感じたこと

長澤:福田さんは研究に留まらず自分でもアグロフォレストリーをやってみたいと思うところが素晴らしいですね。プレゼンコンテストでは、日本でやりたいという情熱を語っていましたが、一連の活動を経た感想を聞かせてもらえますか?

 

福田:実はコンテストを通して色々な立場の方から「実現性が低くて成功は難しい」と口を揃えて言われてしまい・・・入試もあったので今は研究も気持ちもそこでストップしています。

 

長澤:そんなことがあったとは・・・現実の厳しさを想像できてしまったのでしょうね。

 

福田:私は日本の農業にアグロフォレストリーの知恵を取り込めばさらに稼げる農業経営ができるのではないかと考えていたのですが、実際にアグロフォレストリーを実践している方にもしっかりと否定されてしまい、環境面では持続的だけど収益性は持続的ではないことを思い知らされました。

 

アグロフォレストリーで成功するために必要なこととは

長澤:私もかつて同じような体験をしたことがありますよ。アグロフォレストリーに出会った頃は、生産者や研究者が口々にネガティブなことを言っていて未来が見えてきませんでした。

そこで感じたのは、マーケティングの力が必要だということです。多様なアマゾンフルーツをどの様にして売ろうかと考えて、色んなフルーツのジュースが飲めるジュースバーにしようと思って起業したのがフルッタフルッタです。

そして、「アグロフォレストリー」といっても植え方や作物の組合せなど様々なスタイルがあります。フルッタフルッタが掲げているトメアスのアグロフォレストリーは、アマゾンの厳しい環境のなかで「アグロフォレストリーでなければ農業を続けられない」という価値観から生まれているので、ネガティブな見方がある一方で全く儲からないという発想がないんです。そして私たちが客観的に評価した点を付加価値として伝えているので、ポジティブに伝わっているのだと思います。

東京でアグロフォレストリーをやるのは、気候によってブラジルと形式は違っても技術的にはできると思います。また、福田さんのアイディアでとても良いと思ったのは、アグロフォレストリーと里山を掛け合わせたことですね。両者は形としては似ていますが、里山は商売がベースではないので、マーケティングで付加価値をつけられたらビジネスとして成り立ち発展していくと思います。

 

福田:今のお話を聞いて、マーケティングの大切さに気づかされました。さらに市場や地域や自治体との連携も不可欠だと感じました。広い視野をもって、人と人が協同して繋がりを生み出せるような場を築くことで成功に導いていけるのかなと思いました。

 

長澤:コミュニティを大切にしたり社会との連携を図るのは非常に大事なことですね。さらに肝心なのは、アグロフォレストリーのものだから買いたいというマーケットをつくっていくことです。そうするにはどうしたらいいと思いますか?

 

福田:僕の経験からすると、テレビに出るまでは友人とアグロフォレストリーについて会話したことがありませんでしたが、出演をきっかけに興味を持ってくれるようになった感触があります。実際にアサイーボウルを食べてくれた友達もいて、テレビ出演は滅多にできることではありませんが、地道にでも発信していくことが必要なのだと感じました。

 

世代ごとの共感ポイントの違いとは

長澤:友達や周りの人達に留まらず、繋がりがない人達にも良いと思ってもらえる様な「共感性」が大事ですよね。これまで私も様々なメディアに出させてもらい、その度に周りの人達に喜ばれましたが、それは「メディアに出たこと」への反響であって、アグロフォレストリーに対する反応は薄かったように思います。福田さんの場合は、共感してくれる人はいましたか?

 

福田:そうですね・・僕の出演をきっかけにアグロフォレストリーを知ってくれた人はいましたが、アグロフォレストリーだからアサイーに興味を持ってくれたり、アグロフォレストリーをもっと知りたいという声は実際のところなかったですね。

 

長澤:それは残念でしたね(笑)テレビの内容ではアグロフォレストリーの難しさが印象づいてしまったのでしょうね。

ではまた同じ様な質問になってしまいますが、福田さんはアグロフォレストリーのどの様な点に惹かれたのでしょうか?もしかしたら人々が共感してくれるヒントがそこにあるのかもしれません。

 

福田:色んな部分に惹かれたのが正直なところで、これといったポイントを定められないですが・・・アサイーと農業が好きだからアグロフォレストリーも好きになったというきっかけは間違いないので、僕と同じようにアサイーが好きな人はアグロフォレストリーも好きになってくれる可能性が高いのではと思います。

あと・・・感覚的なものですが、アグロフォレストリーには新しさを感じたり、農業というと「稲作」「二毛作」など色んな用語がありますが、日本語だと固い感じがするので英語の「AGROFORESTRY」という言葉の響きも好きですね。あと楽しそうというイメージも。

 

長澤:ネーミングが好きとか、楽しそうなど、初めて言われました!これまでにない新しい視点ですね!

私の固定観念かもしれませんが、我々の世代だと「農業」や「アグロ」といった言葉から新しさを感じることができないです。また、トメアスのアグロフォレストリーが確立された背景に日本人移住者の困難があったので、それでイメージが固まってしまっているのもあるかもしれませんね。

そうやって若い世代の人達がアグロフォレストリーをポジティブに受け入れてくれるのであれば、その世代に対しては伝え方の優先順位を変えても良さそうですね。

 

福田:その話をお聞きして感じるのは、自分を含めて若い世代は新しいことが好きで、アグロフォレストリーがカッコ良く思えたり、アサイーのことをまだ知らない人が多いという土壌があります。だからこそチャンスですし、私たちの世代をターゲットにしていくとアグロフォレストリーがもっと広がるのかなと思いました。

 

長澤:そういう点では、今の時代の方がやり易くなっているのかもしれませんね。

 

Z世代が求める幸せ、そして福田さんの次なるステップとは

長澤:ところで福田さんや同世代の人達は今どの様なことに興味がありますか?

 

福田:そうですね・・金融業界や大手企業に務めたいというよりかは、起業に興味がある人が多い気がしますね。あとはお金より環境や社会のために何かしたいという想いが強いのではと思います。そういったところに幸せや嬉しさを感じるというか。僕自身もお金は最低限でよくて、楽しいことをやって誰かの為になれていたら幸せだなと感じます。

 

長澤:そうですよね。最近はそういう人がとても増えているように思います。農業も含め、文明が自然に逆らって発展してきて、豊かさや便利さが一定のレベルに達して何でもある時代に生まれた世代、つまりあなた達の世代が、より強く自然の価値を感じてきているということですよね。結局人類は自然に戻っていっている、自然を求めているということだと思います。

トメアスのアグロフォレストリーは、アマゾンでは自然の仕組みを取り入れなければ農業を持続できなかったから成立した農業。つまり「自然そのもの」みたいなものです。

福田さんのように若い世代の方が、アマゾンの、伐採されて荒廃した土地を緑に、より自然に近い形に再生させていくことに喜びや共感を感じてくれるのは、そういうことなのではないでしょうか?

 

福田:その通りです!

 

長澤:かつては自分の得やどれだけ儲けられるかが重要視されてきましたが、時代の移り変わりによって、幸せの価値観が変わってきた感じがしますよね。

その点でアグロフォレストリーは、今の時代において共感を掴み得る要素を持った農業といえます。

アグロフォレストリーは気候が違っても作物や形式を変えればどこでもできると思います。難しいのは共感者を増やしマーケットをつくることですね。これからは福田さんの様に新しい価値観を持った若者が増えて、どんどんやり易くなっていくと思います。

さらに最新のデジタル技術を取り入れたアグロフォレストリーの産物の販売システムや、その購入者が炭素クレジットも購入できるなど、新たな仕組みができるとさらに若い世代の関心が集まりそうですよね。

ところで福田さんは大学では何を学ぼうとしているのですか?

 

福田:僕が進学する学部は「文理融合」を掲げていて、文系理系を問わず幅広い学びを政策立案に生かしていくというものです。この1年間アグロフォレストリーや農業の研究に集中していたこともあり、大学では色々なことを学んでアグロフォレストリーに生かせたらいいなと思ってます。

 

長澤:それは興味深いですね。今日話したこと以外では、アグロフォレストリーはITを生かせる分野だと思います。多様な作物を管理するシステムとか、ITの優秀な技術者とアグロフォレストリーをマッチングするような事業とか・・・あと30年若かったら私がやりたかったなぁ(笑)

とにかく色んなことを吸収してぜひ頑張ってください!

今日は沢山の刺激をもらいました。ありがとうございました!

 

福田:こちらこそありがとうございました!

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